
プノンクロムはシェムリアプ市街に近いトンレサップ湖北辺の港に立つ小さな山だ。頂上にはアンコール遺跡がある。しかし、クライマーの関心は中腹より下にある石切場跡の岩壁に向くだろう。堅く鉄分の多い泥岩で、ダイナマイトの生んだひびが縦横に走っている。お陰でヒステリックな子供の積み木みたいにいきなり崩れたりする。私たちはしばらく躊躇と逡巡の塊と化していたが、ある日ここに、奇跡的に硬い小さな赤い壁を見つけ、ボルトを2本入れた。気楽にプチレッドクリフと命名。簡単だが、限定すればそれなりに楽しめる。トップには珍しく根の張った太いブッシュがある。これを使ってラペルやロープワークのトレーニングが出来るが、無論一日を潰すほどのものでは、まったくない。湖を振り返ると“千と千尋”の幻想シーンを彷彿する景色が広がっている。夕暮れ時は特に美しい。それが僅かにプラス要素と言えなくもない。
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